ロゴ画像

〒180-0004
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-8-4 i-office
JR/京王井の頭線 吉祥寺駅北口から徒歩5分

黙示の指示とは? ―「言っていないのに」労務トラブルになる理由

黙示の指示とは?

「残業しろとは言っていない」
「早く来るようにとは指示していない」

それでも、労務トラブルの場面では
“会社の指示があった” と判断されることがあります。

そのときに問題となるのが、「黙示の指示」 です。
言葉にしていないにもかかわらず、結果として“指示と同じ扱い”を受けてしまう。
多くの経営者が、ここに違和感や理不尽さを感じます。

ただし、裁判所の考え方は「経営者を罰する」視点ではありません。
ポイントは、職場の実態としてどう受け取られる状況だったか にあります。

「黙示の指示」の考え方

  • 黙示の指示とは、明確な命令がなくても、事実上「やらざるを得ない状況」があれば指示と同視される
  • 判断の軸は「言ったかどうか」ではなく、職場の運用・雰囲気・期待の示し方
  • 経営者に求められるのは、言葉を厳密に管理することよりも、誤解が生じにくい仕組みづくり

裁判では何を見て『黙示の指示』と判断されるのか

法律上、労働時間や業務命令は
「使用者の指揮命令下にあるかどうか」で判断されます。

ここでいう「指揮命令」は、
必ずしも明確な業務命令や文書による指示に限られません。

判例では、概ね次のような観点を総合して判断されます。

  • 業務上、その行為が事実上必要とされていたか
  • 上司や会社が、それを黙認・容認していたか
  • 行わなければ、評価・業務遂行・職場での立場に影響が出る状況だったか
  • 会社が結果として、その行為の成果を利用していたか

これらが重なると、
「明示の指示はないが、実質的には会社の指示と同じ」
=「 黙示の指示」 と評価されることがあります。

実務上の注意点・よくある落とし穴

黙示の指示が問題になる場面には、共通する傾向があります。

  • 「みんなやっているから」という職場慣行
  • 成果やスピードだけが評価され、プロセスが問われない評価制度
  • 上司が把握していながら、是正も注意もしない状態
  • 労働時間や業務範囲が、曖昧なまま運用されている

これらは、経営者の悪意とは無関係に生じます。
むしろ、「頑張ってくれているから」「細かく言わなくても分かるだろう」という善意が、
結果として黙示の指示と受け取られることも少なくありません。

まとめ

黙示の指示の問題は、
「言った・言わない」の水掛け論ではありません。

本質は、
社員が迷わず、安心して判断できる環境があるか
という経営の問題です。

  • どこまでが業務なのか
  • いつ会社の判断を仰ぐべきなのか
  • 勝手に頑張らせない仕組みになっているか

これが整理されていれば、
黙示の指示が問題になる場面は大きく減ります。

労務管理は、経営のブレーキではなく、
社員の力を正しく活かすための土台 です。

「言っていないのに問題になる」状態を避けることは、
同時に、経営判断を明確にし、組織を強くすることにもつながります。

関連記事

Q:始業時刻前に早く来た時間は、労働時間ですか?