▶ 固定残業代は、要件を満たしていない場合、制度そのものが無効と判断されることがあります。
その場合、過去にさかのぼって未払い残業代を請求されるリスクがあります。
固定残業代は、残業代をあらかじめ一定額で支払う仕組みです。
その内容が曖昧で法的要件を満たしていない場合、固定残業代として認められず、過去にさかのぼって未払い残業代を請求されるリスクがあります。
固定残業代として認められるための主な法的要件
- 明確区分性(判別可能性)
基本給と固定残業代が明確に区別され、固定残業代の金額が何時間分の残業代に相当するのかを、雇用契約書や就業規則で判別できるように示していること - 対価性
その手当が、時間外労働に対する割増賃金として支払われるものであることを、就業規則や雇用契約書に明示し、本人の同意を得ていること
(例:「固定残業手当(〇〇円)は、時間外労働に対する割増賃金として支給する」) - 差額支払の合意と実施(精算義務)
あらかじめ設定した固定残業時間を実際の労働時間が超えた場合、その超過分(差額)を別途計算して支払う仕組みと実績があること
固定残業代でよく見られるNG例
① 「月給30万円(残業代を含む)」としか書いていない
⇒ 内訳が不明なため、30万円すべてが基本給と判断され、残業代を別途計算して請求されるリスクがあります。
② 「定額だから」と労働時間を記録していない
⇒ 固定残業代でも労働時間の把握は必要です。記録がない場合、従業員の主張が認められる可能性があります。
③ みなし時間を超えても追加支給していない
⇒ 設定時間を1分でも超えた場合は、その分を別途支払う必要があります。
④ 残業ゼロの月に手当を支給しなかった
⇒ 固定残業代は、実際の残業時間にかかわらず支払う前提の手当であり、減額すると固定残業代としての性質を失うおそれがあります。
固定残業代を適正に運用するためのポイント
固定残業代を導入・運用する際には、次の点を確認することが重要です。
- 基本給と固定残業代を明確に区分しているか
- 時間数や計算根拠を、雇用契約書等で示しているか
- 超過分の残業代を、別途支払っているか
- 制度の内容を、従業員に説明し合意を得ているか
- 労働時間を適切に把握し、運用と乖離していないか
まとめ
基本給との区別や時間数の明示、超過分の支払いといった要件を満たしていない場合、
固定残業代として認められず、未払い残業代が発生するリスクがあります。
まずは、自社の制度と実際の運用が要件を満たしているかを確認することが大切です。
特に、基本給との区別や時間数の明示、超過分の支払いが曖昧になっていないかを、一度具体的に点検してみてください。
参考資料(厚生労働省・ハローワーク)
『固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします』

